フリーランスデザイナーの価格表改定 経緯と方法を公開します
こんにちは。グラフィックデザイナーのossoです。
この度、価格を改定いたしました。
その流れをご紹介いたします。
価格表を見直すきっかけ
デザインのお仕事について受注できる場所を増やそうと模索していたところ、懇意にしてくださっているクリエイターさんたちから総ツッコミを受けました。
「そもそも価格が安すぎるョ!」
「え?その価格表安すぎ!!」
「サイトの価格表、今すぐ取り下げて!」
思い返してみれば、これまでにもお客さまからも「安くないですか?」と心配されることがありました。
そうですよね、だいぶ安かったです。
そこでこの機会に
・誰と
・どんなお仕事をしたいのか
・いくら欲しいのか
・なにはしたくないのか
などを一度見直し、適正な価格をつけることにしました。
そもそもなぜ安かったのか
フリーランス転向後、最初に目標にしたのは、デザインを外注したことがない人でも気軽に注文できるデザイナーになりたいということでした。
「個人が頼みやすいデザイナー」でありたいがために、個人=安価でなければと思い込んでいたところがありました。
「お友達に配る名刺を作りたい」「チラシを作ったことないから頼みたい」「どうやって頼んだらいいかわからない」というニーズは多いものです。誰かのために作りたい気持ちが先行して価格をしっかり考えられていなかったようです。
安価な金額設定だったためか、noteなどを経由して受注をたくさんもらっていましたことにも胡座をかいていたかもしれません。
市場を確認する
当時の個人向けデザインは比較的ブルーオーシャンだったように思いますが、第2子出産/育児で一時デザイン業のボリュームを縮小している間に市場の状況が変化していました。
これは価格を決め直すためにターゲティングを設定し直す中でやっと気づいた(遅い!)のですが、せっかくなのでその過程も公開してみます。
ターゲット層はどこだったのか
これまで「どこにいる」「どんな人」のために「何を」作りたいと思っていたのかを書き出してみました。
すると、だいぶ辛口ですが、
・たまたまわたしと連絡が取れた人と
・生活の中で人の目に触れる何かを作りたい
という状態に陥っていたことがわかりました。
理想はもっと高いはず。以下にもっと深く分析してみます。
実はレッドオーシャン化していた市場
ターゲティングを見直すには市場と競合の状態を確認することがかかせません。
わたしが制作のお仕事を抑えている数年間に、いったいどんな変化があったのか。
1で洗い出したターゲット層が今、誰にデザインを発注しているのか、さらに、その市場で活躍しているデザイナーさんの質や種類も分析しました。
市場の変化
・ココナラなど初心者でも参加しやすいクラウドマーケットが台頭
・働き方改革などで副業/兼業する人が増えた
・在宅ワークの一つとしてデザインに気軽に挑戦する人が増えた
・扱いやすい安価/無料のデザインツールが多く開発された
・SNSで簡単に集客できる土壌が発達し、発信力があればSNSで受発注〜納品が完了する
発注者側の変化
・デザイン外注未経験の個人が依頼先を探しやすく頼みやすいマーケットが醸成された
・SNSやWEBサイトに対するリテラシーが高い
・できないことは外注すればいいという「得意」と「不得意」を切り分けられる意識を持つ人が増えた
活躍するデザイナーと価格の状態
・デザイン初心者でも売りやすい時代になった
・簡単にデザイナーを名乗る人が増えた
・デザイン業を初めてから販売までのストーリーをうまく発信できている
・ブログとSNSの親和性は高く、SNSでのアピールが上手い/ストーリーに共感できればクオリティが問われない側面がある
・ポップでカジュアルで勢いと若々しさがあるものが多い
・初心者が多いので「伸び代」のあるデザインが多い
・戦略的に無料で制作を請け負う人が続出
・クオリティではなく受注数によって値上げされている
・デザインが常にどこかで安売りされている
市場が抱えるリスク
・今集客したお客様に10年後も継続依頼してもらえるか?
・制作アプリの操作性が簡便化することでリテラシーの高い人は自分でデザインできるようになってしまう
・きっとすぐ飽和状態になる
ここまでで市場をだいぶ捉えられたので、つぎは自分の状態を見つめなおします。
今のお仕事を振り返る
実際にデザインを依頼してくださるお客様は、ほとんどが何かビジネスをされている方でした。
整骨院さんだったり、サロンオーナーさんだったり、中小規模の食品メーカーさんや文具メーカーさんだったり。
はたまた、出版物を売りたい、イベントを企画したい、といった、そのものが売買につながる企画であることも多かったように思います。
つまり、個人事業主さんや、ある程度ビジネスを展開されている方がわたしのデザインを選んでくださっていたということに気づいたのです。
だからこそ、わたしの価格設定が安いことを心配してくださっていたのですね。
「こんな金額でやっていけるの?」
その通りです。
金額が高いことは罪悪ではない。もてるスキルで提供できるクオリティを適正な価格で。その価値をご理解いただける方がお客様である、と再認識しました。
自分の将来像を想像する
3年後、5年後、10年後の自分がどんなデザイナーになっていたいのかを改めて考えました。
自分の生活スタイル
・子どもの成長とともに使える時間枠が変わる
・自分の年齢も上がる
・お客様のブランディングや販促をデザインでお手伝いできる仕事がしたい
・誰かの生活が豊かになったり、悩みを解決できるデザインがしたい
・デザイナーとして目立った存在になっていたい
お客様の未来の状態
デザイナーとしてはできれば長く継続しておつきあいしたいもの。お客様のビジネスやブランディングをしっかり把握して・・・ということは、お客様にも長くビジネスを継続し成長していていただきたいと感じています。
たとえば、今はスタートアップ/起業直後などで小さくビジネスをされていたとしても、5年後10年後のビジョンを大きく捉えて、一緒に取り組ませていただけたら最高だなと考えています。
こうして並べてみると、今までののターゲット層と自分の将来像がまったく一致していませんね!
いや〜、気付けてよかったです!(遅い)
では、ここからやっと価格改定に取り掛かります。
自分をブランドとして見立てる
相場を調べる
ありがたいことに、フリーランスの方々が価格の相談に乗ってくださいました。
価格付の考え方や、他の方の価格から感じる相場観は非常に参考になります。
また、一般的な相場をまとめたサイトもいくつか拝見し、自分との価格に差を一つ一つ根拠をつけながら整理しました。
自分が提供できる価値は何か考える
価格を改定することで実質値上げになってしまいます。
そこで、お客様に感じていただける価値を再整理しました。
わたしの強み
・経験年数は10年以上
・女子がときめく写真が撮れるデザイナー
・マーケティング経験があるデザイナー
・個人ブランドを運営してるデザイナー
であること。
さらに、お客様のレビューからポジティブワードを抜き出すと自分の強みが見えてきます。
わたしの場合は、スタイリッシュ/ガーリー/おしゃれ/シンプルレトロ/使いやすい/読みやすい/綺麗/品がある などの評価が並んでいます。
女性らしい優しさや綺麗な印象を喜んでいただけることも。
制作で意識すること
頼まれたものをただ作るだけではなく、ひとつひとつのパーツに根拠をもってデザインしています。
そのために
・お客様のベネフィットを叶えるためのヒアリングや制作に力を入れている
・クライアントさまの先にいるエンドユーザーの悩みを解決できるデザイナー
であることを強く意識しています。
今すぐできること
この機会に有料フォントや素材の追加も行い、よりクオリティを上げて提供できる土台を整備しました。
制作サンプルや制作事例など、見て感じていただける資料の準備を進めます。
まとめ
市場は常に成長し変化しています。その間、自分自身もなんらかの経験を積んでスキルアップしたり知識が増えたりしているはずです。
低価格で勝負することは業界全体の足を引っ張ることにもなります。適正価格であることが安心感につながることだってあります。
わたしの場合は、個人のお客様は高い制作物だと躊躇するのでは?と安売りした結果、自分の価値を下げることになっていました。
そうではなく、価値を感じて納得してくださる方と、価格に見合ったクオリティのお仕事をするべきですね。そして、価格の差ではなくクオリティや知識・経験の差で勝負していきたいと思います。
ということで、ターゲティングも見直して出来上がった価格表がこちらです。
わたしの強みを生かしてお役に立てるものを制作します。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。